はじめに

 この本の著者は四十年以上も羊飼いである主とともに歩んできました。著者の教えが厳しい試練と苦難の中から生み出されたものであることは明らかです。著者は羊飼いが誠実な方であることを自ら証明してきました。
 著者をよく知っていることは私の特権ですから、本書の紹介を書くのを大いに名誉あることと思っています。ケッチャム先生は一人の真摯なクリスチャンであり、神に深く教えられた人であり、最高の説教者です。信仰に堅くたってひるむことなく、反対者であっても先生の雄弁で鋭い論証の矛先を前にすると、たじろくばかりです。それにもかかわらず、先生には子どものように素直な心があり、主イエスを愛し、主にある兄弟姉妹を愛しておられます。涙は先生の人格を円熟させ、苦悩は先生の精神を強固にしました。災難は先生を一層強く主に頼るものとさせるだけでした。
 多くの若い人をだめにしてしまう管理職としての重責に悩ませられながらも(先生は年に八万キロ近く旅行し、毎年、一年の日数よりも多い数の講演を行い、大量の手紙をやりとりし、論文を編集し、何千人という人のために自分の心を注いでいます。それも極度の弱視を負いながらです。)、羊飼いなる主は隠れた力の源泉に頼る秘訣を先生に教えて来られました。
 私たちはケッチャム先生を、単なる偉大な説教者としてだけではなく、また先生の教派において非常に重要なポジションに就く者(ジェネラル・アソシエーション・オブ・レギュラー・バプテスト・チャーチイズの国内代表)としてだけではなく、神に教えられた一人のへりくだったクリスチャンとして先生を紹介したいと思います。羊飼いの下にへりくだった先生は、私たち多くの者に先立って歩んで来ました。そして偉大な羊飼いについてすばらしい真理の数々を発見して来ました。そしてここに先生は自分の発見してきたことを私たちに分かち合うため、私たちのところにもどって来ました。それゆえ私たちは自信をもって前に進んでゆくことができるのです。なぜなら羊飼いはここにもおられ、ただ私たちが後に従うならば、私たちも羊飼いにお会いすることができるからです。

一九五三年七月

ムーディ聖書学院 学長
ウイリアム・カルバートソン